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門前払からの社労士試験 〜岩瀬秀幸 社労士への道〜

日本法令・社労士V 1999年1月号「私の合格体験記 コンプレックスが変えた社労士への挑戦」より。
続編「開業ドタバタ体験記」はこのページのエピローグからリンクしています。


プロローグ 第1年目
第2年目 写経学習法
インターバル学習法 ゾーンプレス学習法
クライマックス〜受験、そして合格発表 エピローグ
      

士業の資格試験に関し、参考になる書籍です。
管理人も読んでいるオススメ本
説  明
シングルマザーの税理士合格記  友人の税理士がご自身の離婚から試験合格、そして開業までを書いている。同じ境遇の人のために書いたというよりも、ご自身のけじめに思われる。開業して一端にやっているからこそ、これだけのことが書けるのだろう。女性向け。
独立開業ああ本日も仕事なし―新人司法書士円月堂抱腹絶倒奮戦記  司法書士の合格から独立開業まで赤裸々に書いてある本音の一冊。資格学校では決して語らない、語れない内容で、合格した者だけがうなづいてしまう内容です。男性向け。

■プロローグ

 私は、コンピュータを使って機械設計をしている、いわゆる技術屋です。そんな私が「社会保険労務士」という畑違いの国家資格を目指すことになったのは、次のようないきさつからでした。

 私の職場では、私以外は全員大卒です。仕事では誰にも負けていないと自負していたのですが、学歴コンプレックスは相当なものでした。

 そこで、2年半前のこと、30歳になったのをきっかけにして通信制の短大に入学することにしました。その時は、ただ卒業証書がほしいという気持ちしかなかったのですが、いざ入学してみると、社労士や税理士の受験資格を得るためという人たちが多いことに気づきました。私は、この時初めて「社会保険労務士」という言葉を聞いたのです。

 ある日のこと、妻が資格を取るために学校へ行きたいと言い出したのですが、その資格が社労士でした。私は、妻から社労士の素晴らしさを聞きました。そして、この時、すでに社労士になりきっていました。自他共に認める、思い込みの激しいタイプなのです。受験することすら許されない現実とは、完全に別世界ができあがっていました。妻も、まさか代わりに私が受講するとは思ってもいなかったでしょう。

 随分と前置きが長くなってしまいましたが、私には、この動機が受験のエネルギーのすべてでした。とりあえず人気のある資格だから取っておこうというのでは、とても合格できません。「社労士になりたい」くらいでなれるのなら、誰も苦労などしないのです。

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■第1年目

 教育機関をどこにするのか決めかねていましたが、妻から「N社では帳票を作っている」ということを聞き、その一言で決めました。N社ならば開業まで面倒を見てもらえると聞いていたからです。資格を取るだけなら別にどこだって良かったのです。この教育機関でなければ合格できないなどというところはありません。そこで私は、合格率7%ということで、「自分はとても1年では無理だ」と思い、受験資格が無いことを承知で受講することに決めました。

 10月から本論講座が始まると、予習として一通りSシリーズのテキストを読んでから受講しようとしました。本論講座の間は復習型の方がいいという声を聞きましたが、法律の勉強などまったくしたことのない私にとって、予習をしないということはただ5時間座っているだけになるからです。 気が付いてみると、2月から実戦力養成講座になっていました。本論講座で基礎を固めておかなければならないのに、全くできていない私にとっては、混乱期の始まりとなりました。講義の前に行われる小テストで、最初の科目の労基・安衛法では、なんと2点を取ってしまったのです。5肢択一の10問で2点ですから、鉛筆を転がしたのと同じスコアです。今までの勉強は一体なんだったのか、この時ばかりはさすがにこたえました。

  4月からの過去問題対策講座が始まると、さらについていけなくなりました。今までは一週間に一回でしたが、ときどき土日の連続となって、勉強でついていけないうえ、さらに時間に追われるようになったのです。そして焦るあまりに○か×かの回答のみが気になって、丸暗記のようになりました。こんなわけで、この年は、ただ勉強に追われるだけの1年となり、結果は失敗に終わりました。

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■第2年目

 2年目の夏になると、短大の単位もすべて修得していたので、社労士の勉強一本になると思いきや、4年制大学の科目履修生となっていました。編入学をにらみながら、民法などの法律の勉強をするためです。講師は弁護士の先生で、合法なのか、違法なのか、というかなりきわどい事例を法律条文で考えるというものでした。そのとき初めて、条文にはそれぞれ参照条文があって結びついている、ということを知ったのです。

 そこで労働法全書を読んでみました。1年目にはほとんど使用のしたことのないものです。条文を1つ読んでは、その参照条文続けて見ていきました。Sシリーズでは、条文の後に施行規則が載っていますが、そんな細かいことよりも、全体像をとらえることが目的でした。

 実戦力養成講座になると、昨年味わったあの屈辱の小テストがあります。その結果によって、成績優秀な人たちが名前を呼ばれます。思えば1年前、いつも呼ばれていたいわゆる「有名人」の人たちは、やはり合格していました。私は、「今年は有名人になるぞ」と決意していました。目標は、3回連続で呼ばれること、記述式では全科目4箇所以上正解すること。

 結果は、労災、雇用、徴収、労一、健保まで5回連続呼ばれることとなり、目標のひとつはクリアしたのです。総得点で51点、記述式では5箇所完全正解が6科目、4箇所正解が1科目、上々の出来映えに思えます。ところが、社一の記述式が1箇所しか書けなかったのです。年金白書がノーマークでした。もし本番であったなら、不合格が待ち構えていました。

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■写経学習法

 とにかく、条文をお経のように声に出して読んで、そして書きまくりました。演習問題として出題された条文については、空欄部分だけを書くのではなく、全条文をそのまま書きました。それは、その条文が重要なものであるということであり、たまたまその箇所を空欄にしただけなのです。

 今年の厚生年金保険法の記述式では、大方の予想通りに雇用保険法との併給調整が出題されましたが、3箇所以上書けた人は少なかったようです。それは、空欄となった部分が演習問題での箇所と違っていたからです。この問題に関しても、私は3問正解しています。出題される条文がわかっているのに、得点できないのは非常に効率の悪いことです。

 択一式で出題された条文についても、できる限り書くようにしました。それは、たまたま択一式で出題されたのであって、重要条文には違いないからです。

 記述式、択一式の区別なく、とにかく条文をそのまま覚えたのです。そうすることによって、記述式はもちろんのこと、択一式においても効果がありました。問題文を読んでいると、どこか引っかかるのです。まさに野生の勘のようですが、これが結構当たっているのです。もちろん、大半はきちんと正誤判断ができましたけど。

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■インターバル学習法

 人間の記憶の構造というのは、まさにコンピュータと同じです。大脳というメモリは大型コンピュータ並みの性能なのです。「自分は年をとっているから、記憶力が悪い」という人がいますが、それは大きな間違いです。その証拠に、答えを見た瞬間に「ああ、そうだった」といいます。大脳が記憶していないのなら、そうだったかどうかもわからないはずです。つまり、大脳は記憶しているのですが、それをどこにしまったのかという番地=アドレスがわからないのです。

 そのアドレスをなくさないようにするための学習方法が、インターバル学習法です。記憶というのは、復習をすると効果的なことは周知のとおりです。では、限られた時間の中で最も効果的に復習をすることとは、どういったタイミングになるかということになります。それは、倍々に復習するタイミングを長くしていくことです。今日間違えた問題は、明日復習します。次に、3日後、1週間後、2週間後、1ヵ月後、2ヵ月後、4ヵ月後という具合です。したがって、いつ問題を解いたのかわかるように、日付を記しておく必要があります。

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■ゾーンブレス学習法

 ゾーンブレスというのは、サッカーの戦術のひとつです。攻撃陣と守備陣のラインを狭くして、中盤を厚くし、数的優位にしてゲームを支配するのです。したがって、中盤を飛び越えるようなロングパスには通用しません。

 話があさっての方向に行ってしまいましたが、社労士の試験問題について考えてみましょう。毎年必ず出題されるというような、いわゆる定番問題が6割あります。それから、誰もできないような、いわゆる落とし問題が2割あります。つまり、定番問題の6割がきちんと得点でき、残りの2割の半分が得点できていれば、7割となり、合格ライン突破です。そんなことは受験生ならば、百も二百も三百も承知でしょう。しかし、それを踏まえた学習をされているでしょうか。

 私は、先生方に質問をしたときに、その意味が容易に伝わったかどうかで、落とし問題なのかどうかを判断しました。先生方も、受験指導のプロなのですから、多くの受験生がわからないところはすぐに察知してくれます。その結果、落とし問題と判断したならば、割り切るようにしました。要は合格すればいいのですから、満点をとる必要などないのです。

 また、できる問題について確実に得点するためには、ある程度の復習は必要でしょうが、それ以上に行うことは無駄となります。ある程度の間隔を置いてもきちんと解ける問題については、どんどん塗りつぶしていきました。塗りつぶした以上は、もう2度と見直さなくても本番で得点できるという意味です。このようにして、どんどん学習するゾーンを狭くしてプレスをかけていきましたので、最終的には各科目10問程度になりました。どんどんと学習ゾーンを広げていくようなことはしていませんか。ロングパス対策など不要です。

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■クライマックス〜受験、そして合格発表

 「実力が出せれば必ず合格できる」と信じて臨みました。会場に近づくと、教育機関各社がパンフレットを配っていました。「自分には必要ない、今年で絶対に決めてやる」その思いから、受け取りませんでした。

 教室に入ると、とても緊張して手が震えて、どうしようもなくなりました。そんな時、「今年は(資格を取ったから)受験できるのだ」その言葉を繰り返し唱えました。

 そして試験開始。第一問目を見てびっくりしました。なんと、前日に友人から「安衛法の記述はどこが出るの」と聞かれ、「第1条の目的。責任体制、自主的活動、快適な職場環境。この言葉には要注意です。」と答えているのです。そこがズバリ的中、それで調子に乗りました。

 択一式は一般常識から取り組みました。データを忘れないうちに回答しておきたかったのと、得意だったからです。一般常識を苦手としている人は多いと思いますが、そういった人は、「一般常識」という名前に騙されて、勉強していないと思えるのです。他の科目と同じぐらい時間をかけて勉強すれば、容易に得点できるはずです。何しろ、数字が違うのですから。「この限りではない」などというような、難しい言いまわしなど出てきません。もっとも、私の場合は、数字にはめっぽう強い方ですが。

 健保、国年、厚年、労基、安衛、労災、雇用と、気がつくと一通り終わっていました。労基・安衛法にいく前にトイレに行く予定でしたが、あまりにハイペースで回答できたので、一気に最後まで行ってしまいました。ただ、唯一気がかりなのは、厚生年金保険法だけでした。

 それからの(合格発表までの)3ヵ月間は、本当に長かったです。受験勉強をしていた2年間はあっという間だったのに。

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■エピローグ

 私は、時々、「苦労したのですね」と言われます。でも、私自身は少しも苦労したとは思っていません。むしろ、自分のやりたいことをやってきたのですから、わがまま者だと思っています。

 必死でした。この必死という字は「必ず死ぬ」と書きます。本当に死ぬかと思ったくらい勉強しました。一日平均6時間を超えました。

 これまで、順風に思えた私の受験期間ですが、唯一の心残りがあります。それは、受験が終わるのを待つようにして祖父が入院し、合格発表の前に天寿をまっとうしてしまったことです。祖父に合格の報告ができなかったのです。

 私は、次の目標に向かって歩き始めています。一日も早く「開業ドタバタ体験記」が書ける日を目指して。

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日本法令・社労士V 1999年1月号 「私の合格体験記 コンプレックスが変えた社労士への挑戦」より

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