社会保険の不服申し立て制度
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厚生年金に関する裁決をご紹介します。


老齢給付

障害給付

遺族給付
      

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■老齢給付

 請求人にかかる脱退手当金を支給したとする公簿の記録について審査したところ、公簿上の支給金額が相違している等、公簿の記録に依存して請求人に対し脱退手当金の支給があったと断言することは困難であることから、老齢給付を受けるために必要とされる資格要件を満たしていないとされた原処分は妥当でなく取消。(H14.11.29)

<ここがポイント>

 保険者側と被保険者(受給権者)側で主張が対立する場合は、保険者側で証明するのが筋という判断です。本件の場合は、以下の点に疑義が生じたようです。
・日付け入りのゴム印のサイズが違う
・上下と中央の文字が向き合っていない
・「脱手」の文字が判読不能

 

 請求人と○○の間には実質的には離婚の合意がなく、かつ、再度婚姻の届出をするまでの期間、両名は事実上婚姻関係と同様の事情にあったものと認められるため、加給年金額を加算しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.8.30)

<ここがポイント>

 加給年金の打ち切り事由に「配偶者が離婚をしたとき」というのがあるが、連帯保証人になっている等の理由で債権者から逃れるため(危険回避の緊急避難的な対応)であり、かつ、事実上も従前のように一体で生活を維持していた(たとえ住民票を異動させていても)ので、「配偶者が離婚をしたとき」には該当しないと判断された。

 

 請求人の戸籍上の配偶者との婚姻関係は、受給権発生時において請求人との間に生計維持関係がないばかりでなく、既に長年に亘って実態を失って形骸化しており、内縁の妻を配偶者として認めることが妥当と判断されるため、老齢厚生年金に加給金を加算しないとした原処分は取消。(H14.9.30)

<ここがポイント>

 別居状態にある戸籍上の妻と重婚的内縁関係にある者がいる場合、どちらの者を対象とした加給年金が払われるかであるが、本件は戸籍上の妻と「婚姻関係の形骸化」と認定されるか否かである。別居後、月額10万円仕送りしているが、これは子供が成人に達した後も継続されており、「婚姻関係破綻に伴う生活援助又は慰謝料の支払としての性格を持つ」と判断されている。連絡についてであるが、半年に1回程度電話や面談をしているが、子供の近況についてはほとんど知らないことから「離婚のための話し合い」であると判断された。もっとも、内縁関係にあるものを健康保険の被扶養者としていなかったり、控除対象配偶者にもしていなかったが、これらは離婚が成立しないと手続がされないものと思い込んでいたためである。

 

 請求人の配偶者は、請求人の老齢厚生年金受給権発生日のわずか9日後に早期退職希望者の募集に応募しているところからみれば、発生日においてすでに早期退職を決意していたか決意する可能性の高い状況が客観的にあったものと認められ、近い将来に収入が著しく低下することが予測されたものというべきであり、加給年金額を加算しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.11.29)

<ここがポイント>

 加給年金が加算される年収要件は「配偶者について、年収850万円未満」か「配偶者の年収がおおむね5年以内に850万円未満になる見込みがある」ことである。本件の場合、5年3ヵ月後に定年退職を迎える予定であったため、保険者側は不支給と判断したが、(受給権発生後の)9日後に早期退職に応募しており、近い将来著しく年収が低下することが予想できたと判断された。なお、5年以内というのはあくまでも「おおむね」であり、5年3ヶ月だったとダメなのかという疑問は残っている。

 

 請求人は、(亡)○○の死亡当事同居していた二男であり、老齢年金の未支給を請求したところ、先順位者(配偶者)である利害関係人に支給済みであるとして不支給の原処分を行ったものであるが、(亡)○○と利害関係人との関係は少なくとも平成6年頃以降は婚姻関係に準ずるような密接なものであったということはできず、請求人は、死亡当事生計を同じくしていたと認められるため、原処分は妥当でなく取消。(H14.4.30)

<ここがポイント>

 未支給年金の支給を受ける者の要件に、受給権者の死亡の当時、生計を同じくしていたことが必要であるが、本件の配偶者は戸籍上の妻ではなく内縁関係にある者である。受給権者は、平成8年3月に死亡したが、平成6年頃、内縁関係を解消しているので、死亡の当時、生計同一にあったとはいえないと判断された。よって、次順位者の子に支給されるべきとしたもの。

 

 請求人の老齢厚生年金については、請求人の申し立てた被保険者記録が本人のものであると認定するのが相当であるため、当該資格要件を満たしていると認められたため、老齢厚生年金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消し。(H14.9.30)

<ここがポイント>

 請求人は船員保険の期間があり、その期間において弟名義の船員手帳を持って乗船していたので、この期間が請求人のものと認めれるか否かが争われた。どうして弟名義の手帳を所持することになったかと言えば、父親に戸籍抄本の取付を依頼したところ、誤って弟のものが送付され、乗船期日が迫っていたためやむなく弟名義の手帳を取得した。弟においては、船員手帳を取得したことは一度もないと申立てており、また請求人も船員保険の被保険者期間と厚生年金や国民年金との被保険者期間との重複もない。さらに、船員仲間、旧雇用主らに写真を見せて確認をしたところ、乗船していたのは請求人であったことが認められたため、弟名義の船員手帳を保持して乗船していたのは請求人本人であると判断された。なお、他人になりすまして就労、納税、失業保険や医療保険の受給をしてきたことを本裁決が是認していないことが付言されている。

 

 請求人は、脱退手当金の支給をうけていないため、老齢基礎・厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の認めるべきであると主張しているが、公薄の記録に不審な点脱退手当金を支給したため厚生年金保険の被保険者期間としなかった原保険者期間を認めなかった部はないことから分は妥当。但し、国民年金の特例納付に関して、老齢基礎年金の算定となる被保険者機関を認めなかった部分は妥当でなく取消し。(H14.10.31)

<ここがポイント>

 特例納付に関し、2つの被保険者期間があり、保険者はそのうちのひとつについては特例納付をしたが他方については請求人からの特例納付の申告がなかったと主張しているが、請求人の記憶では2つの期間について被保険者証を持参したとしている。このような状況で、保険者が主張しているひとつの期間のみ特例納付の申告があったとするのはいかにも不自然であり、かつ、請求人の記憶を覆すに足る資料もないとして、保険料納付済期間と判断された。

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■障害給付

 請求人の両持発性大骨頭壊死については、当該傷病の原因であるネフローゼ症候群の初診日は昭和61年6月に健康診断日として、昭和62年12月までの被保険者期間を計算の基礎とした障害厚生年金を裁定されたが、昭和62年から平成9年までの間は通常の勤務をしており、治療行為もなく腎機能の異常もなかったことから、初診日は平成9年10月6日とするのが相当であるため、原処分は妥当でなく取消し。(H14.5.31)

<ここがポイント>

 初診日の考え方として、治療を目的としない受診(健康診断、集団検診等)は初診日とせず、その後医師の診察を受けることになり、治療が継続する状態になったとき(具体的な治療行為又は療養の指示があった日)を初診日としている。なお、本件において障害等級については争いがなく、もっぱら初診日についての争いであることの意味は、障害認定日の月後は障害年金の金額の基礎としないとされているからである。

 

 請求人の精神分裂病について、発病日は厚年の被保険者でなかったが、社会的治癒の期間があったものと認め、再発初診日は被保険者期間内にあったと判断し、かつ、裁定請求日における障害の状態は3級の程度に該当していると認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消し。(H14.8.30)

<ここがポイント>

 社会保険の運用上は、過去の傷病が治癒したのち再び悪化した場合は、再発として過去の傷病とは別傷病とし、治癒が認められない場合は、継続して同一傷病と取り扱われるが、医学的に治癒していないと認められる場合であっても「社会的治癒」とされる場合は、再発として取り扱われる。本件の場合、昭和53年3月(被保険者ではなかった)に初診日があり、平成7年4月(被保険者になっている)までの間、通勤状況も良好であり、標準報酬も昇給しており、年に4から5回の通院であったものの社会的治癒と判断された。そして、平成7年4月に病状が明らかに悪化した。

 

 請求人の慢性賢不全については、厚年の被保険者期間に発した傷病と認められ、かつ、裁定請求日における障害の状態は、裁定請求日当事の資料がないが、少なくとも3級には該当すると認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消し。(H14.8.30)

<ここがポイント>

 保険者側は昭和52年が初診日だとしているが、その当時請求人はまだ学生であり、職場の定期健康診断で異常が発見されたとするのは疑問がある。反面、請求人は昭和59年に病院で診察を受け、医師が発病から初診日まで放置したと思われるとしている。どうして、保険者側は昭和52年にしたいのかといえば、昭和52年当時は、請求人は20歳前であり、そうなると3級の障害等級では障害年金は支給されない。しかし、昭和59年であれば、厚生年金の被保険者であるので3級であっても障害年金が支給される。

 

 請求人の右正中神経障害について、既往傷病である右正中神経断裂、右示〜環指屈筋腱断裂とは医学的に因果関係があるとする保険者の見解を否定できないが、経過等から考慮して別傷病であり、かつ、初診日は厚年の被保険者期間中であると認められ、また、裁定請求日における障害の状態は、3級の程度に該当すると認められるため、不支給とした原処分は妥当であり取消し。(H14.8.30)

<ここがポイント>

 請求人は平成3年4月に負傷し、平成4年8月に最終診察を受け、その際には動作状況は十分であったとされている。その後、4tトラックの運転手として職場復帰をし、野球、ゴルフ、スキー等のスポーツも行ってきた。そして、平成11年2月にタクシー運転手として乗務中に追突されて負傷した。医師の診断は、既往傷病は完治しており、交通事故の衝撃により強制されて疼痛等の症状が急に発現したものと判断し、初診日を平成11年2月の交通事故日とした。

 

 請求人の脊髄小脳変性症による障害の状態は、下肢による常時動作のすべてが一人で全くできないか又は一人でできてもうまくできないことが明らかであるから、障害の状態は2級に該当するというべきであり、障害給付を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。 (H14.12.24)

<ここがポイント>

 平成12年2月、何の誘因もなく急に右足関節の痛みを感じ、某外科で診療を受けたところ、右足関節炎・リウマチ(疑)というものであり、2回通院してやめたものの、その後、同年11月に歩行困難となり別の病院で診察を受けたところ、脊髄小脳変性症と診断された。さらに、その後の診療をした医師によれば、平成12年2月においても脊髄小脳変性症と関連があり、リウマチではないとしている。その結果、初診日は平成12年2月と判断された。なお、どうして初診日について争われたかと言えば、平成12年3月16日で厚生年金被保険者を喪失しており、同年11月が初診日となると、初診日の当時、厚生年金の被保険者ではなくなり、障害厚生年金の受給が受けられないからである。

 

 請求人の精神分裂病による障害の状態は、障害認定日において無為、自閉、無関心な生活態度がめだち、情意鈍磨が著しく、好褥的で就労はせず、終日寝ているような日常生活を送っていること等から、2級に該当すると認められ、また、裁定請求日においては障害認定日の時点における状態とほぼ同程度であると認められるため、3級の障害厚生年金を支給するとした願書分は妥当でなく取消。(H14.1.31)

<ここがポイント>

 病状が2級に該当するか3級に該当するのかである。2級の例示としては「欠陥状態又は病状があるため、人格崩壊、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるもの」となっており、3級は「欠陥状態又は病状があり、人格崩壊の程度は著しくはないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働に制限を加えることを必要とするもの」となっている。この請求人の病状は「言われれば何とかやるけれど、言われなければしようとしない」となっており、休職中であり勤務はしていなかった。このことから2級と判断された。

 

 請求人の脳出血による障害の状態は、一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(2級)に該当していると認められるため、額改定請求時において3級の程度に該当するとして、改定しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.1.31)

<ここがポイント>

 請求人は、平成11年9月より3級の障害厚生年金を受給していたが、障害の程度が増進したとして2級の障害厚生年金の請求をした。争点は、障害の程度が2級と認められるかどうかである。本件の場合、脳の器質障害による多発性の肢体の障害機能であるから、関節個々の機能による認定によらず、身体的機能を総合的に認定することになるところ、日常動作の全項目について1人でできてもうまくできないか、1人では全くできない程度ということで2級と判断された。

 

 請求人のうつ病による障害の状態は、向精神病薬のほか、強力な睡眠薬を多量に処方されており、基本的な症状の軽快は認められておらず、2級の状態と判断されるため、2級から3級への額改定がされた原処分は妥当でなく取消。(H14.3.29)

<ここがポイント>

 平成11年2月当初、「精神症状を認め、身のまわりのことはかろうじてできるが、適当な援護や保護が必要である」とされていたが、平成12年11月に「精神症状を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活上困難がある」とされたのを受けて3級としていた。ところが、別の医師での診断は「日常生活はかろうじてできる」と診断している。平成11年2月と平成12年11月とを比べて、あまりにも改善しているのはいかにも唐突感が否めないし、改善の理由として「仕事がなく、休養が取れ、うつ病やや軽快」となっているのも説得力がない。よって、平成12年11月時点の症状は、当初の症状とあまり変わりはないであろうと判断された。 

 

 請求人のC型肝硬変による裁定請求日における障害の状態は、明らかな食道静脈瘤が認められるとともに肝機能検査成績も異常を示しており、2級に該当すると認められるため、原処分は妥当でなく取消。(H14.3.29)

<ここがポイント>

 当初の症状は、おおむね3級に該当する程度であったが、血小板数に中程度の異常が認められ、さらに当該傷病のために勤務をやめざるを得なかったことを考慮し、2級と判断された。

 

 請求人の陳旧性心筋梗塞による障害の状態は、動悸、息切れ等の自覚症状があり信金機能も低下しており、3級に該当していると認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消。(H14.4.30)

<ここがポイント>

 障害等級は「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」を基準としているが、それに照らし合わせると3級に該当する。

 

 請求人は、左示、中、環、小指切断により、障害手当の裁定をうけたが、請求人の示指は切断後に環指を再接着しており、最接着後の示指は感覚機能の喪失等有用な指機能を有していない状態にあり、しかも中、環、小指も切断されていることから3級に該当するため、障害厚生年金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.5.31)

<ここがポイント>

同上。

 

 請求人のアルコール依存症による障害の状態は、障害認定日においては構成年令別表第1に定める程度に該当しないが、裁定請求日においては国年令別表に定める2級の程度に該当することから、原処分は、裁定請求日において障害給付を支給しないとした点において妥当がなく取消。(H14.6.28)

<ここがポイント>

 障害認定日においては障害等級に該当しないが、裁定請求日において障害等級2級に該当するので、2級と判断された。

 

 請求人のじん肺による障害の状態は、設定基準の2級の例示に相当し、振動障害による上肢機能障害による障害の状態は、3級の程度に相当すると認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消し。(H14.7.31)

<ここがポイント>

 「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」によれば、2級と3級に該当する。なお、2つの年金が受給できるのではなく、選択による一方のみである。

 

 請求人の多発性硬化症による障害の状態は、裁定請求日において2級に該当すると認められ、また、右大腿頸部骨折による障害の状態は、障害認定日において3級に該当する程度のものと認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消。(H14.7.31)

<ここがポイント>

 「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」によれば、多発性硬化症は2級に、右大腿頸部骨折による障害は3級に該当する。

 

 請求人の僧帽弁閉鎖不全症による障害の状態は、2級の例示に相当するものと認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消。(H14.7.31)

<ここがポイント>

 「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」によれば、2級に該当。

 

 請求人の慢性C型肝炎については、臨床症状、検査成績等から判断し、認定基準の3級に相当する例示に該当しているため、障害給付金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.12.24)

<ここがポイント>

 「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」によれば、3級に該当。こんなことなら、裁定請求段階で、認定基準を厳格に適用してもらえればよい。

 

 請求人の変形性腰椎症及び右座骨神経痛による障害の状態は、胸腰部の運動範囲は正常可動範囲の4分の3以下に制限されており、また、症状固定せず治療中であったと認められるので、3級に相当するというべきであり、障害厚生年金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.12.24)

<ここがポイント>

 症状固定せず治療中であったと認められるので、「傷病が治らないで、身体の機能又は精神もしくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」に相当すると判断された。

 

 請求人の頸椎症性脊髄症による障害と、先発の障害等級2級の障害基礎年金を受給している脊髄性小児麻痺による障害とを併せた障害の状態をみた場合、「両下肢の用を全く廃したもの」に該当し障害等級の1級に該当し、設定基準による差引認定その他修正を施した認定の結果、裁定請求時の時点で2級の障害給付をなすべきであり、障害等級3級の障害厚生年金を支給するとした原処分は妥当でなく取消。(H14.12.24)

<ここがポイント>

 先発障害が2級に認定されており、さらに後発障害についても裁定請求をしたところ3級と認定され、それを不服として審査請求に及んだもの。認定基準に照らし合わせて併合認定すると1級となる。しかし、差引認定という修正を加えると1級に該当しなくなる。審査会の判断は、差引認定の妥当性に疑問を抱いており、差引認定の結果が明らかに不合理である場合にはさらに修正を施すのが相当であると判断し、併合認定1級とした。

 

 請求人の脳出血については、裁定時の請求傷病が十数年の長期間にわたって暖徐に進行拡大したものと推認されることから、支給対象傷病と同一疾病又はこれに起因する疾病と認められるものであり、額改定請求時における障害の状態は2級の程度に該当するものと判断されるため、増悪の原因は厚年期間外に発症した支給対象外傷病であるとして、額を改定しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.1.31)

<ここがポイント>

 保険者側の主張は、増悪について何らかの原因があり、それが厚生年金期間外にあるため、当初の傷病に障害は従前のままだとしている。一方、請求人側の主張は、長期間にわたって運動療法、投薬、検査、血液測定等の治療を継続してきて、時間の経過とともに悪くなってきたものとしている。審査会の判断では、保険者側の主張を裏付けるものがないとして、増悪の原因は加齢や脳血管性病変(無症候性脳血管障害)の進行と相まっていると判断した。

 

 請求人の慢性呼吸不全、脊椎側灣証による障害の状態は、肺機能障害、肢体の障害の程度を併合すると障害等級3級に該当すると認められることから、障害給付を支給しないとした原処分は、障害厚生年金と支給しないとした部分について妥当でなく取消。(H14.6.28)

<ここがポイント>

 当該傷病の初診日は、20歳前の日であり、そうすると障害等級の1級もしくは2級には該当しない。しかし、初診日から約2年間は治療を受けたものの、その後、約30年間は格別の症状がなく、勤務も支障なくできており、また治療も受けていなったので、社会的治癒であるとした。その後において、社会的治癒後に診療を受けた日については、厚生年金の被保険者であり、障害認定日における障害等級は3級に該当すると判断された。なお、初診日が20歳前であるとすると国民年金の障害基礎年金となり、それには障害等級が1級と2級しかないが、初診日が厚生年金の被保険者期間内であれば障害厚生年金となり、障害基礎年金よりも障害の程度が軽い3級まであるために、初診日が争点となった。

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■遺族給付

 請求人と(亡)○○とは約6年間の別居期間があり、(亡)○○が度を超えたアルコール依存者で、請求人に対し定期的な生活費の支援はないが、別居に際して請求人に贈与した700万円は、別居期間中の請求人の生活費の提供に該当するものと認められるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消。(H14.7.31)

<ここがポイント>

 本件は、死亡の当事に生計維持関係があったかどうかが争点となった。保険者側は、亡くなった者から請求人へは、定期的な生活費の支援がないとして生計維持関係なしと主張した。しかし、亡くなった者は請求人に対し、別居に際し700万円を与えているが、これは亡くなった者がアルコール依存症であり、自ら計画的に支出することが困難であるために一時金で与えたとして、この700万円が生活費の提供に相当すると判断された。

 

 請求人と夫の婚姻関係は相当に希薄化し、破綻に危機に瀕していたといえるが、両名の共同生活が形を失った期間は1年数ヶ月であり、35年に及ぶ婚姻関係を考慮すれば、一時的な変則の期間であったと認める余地があること、離婚に向けた具体的な行動があった証拠もなく、また、請求人の収入から何らかの生活費の援助があった可能性も否定しがたいことから、生計を維持していたものと認められないためという理由で遺族厚生年金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.12.24)

<ここがポイント>

 本妻と重婚的内縁関係にある者のどちらに生計維持関係があるかが争点となった。内縁の妻は、病身となった亡くなった者の世話を1人で行ったが、本妻と亡くなった者は完全に破綻状態であった。しかし、亡くなった者は本妻に対し、毎月16万円を渡したり、離婚に向けての具体的な行動は取っていなかった。さらに、婚姻期間が35年あるのに対し、同棲期間は1年数ヶ月であり、この期間は一時的なものと認める余地があるとして、本妻に遺族年金を支給するものとした。

 

 請求人の夫である(亡)○○が代表取締役を務めていた会社については、業績は下り坂にあり、売却を意図し、その行動を開始していたものであるから、請求人が(亡)○○の死亡後に会社の事情を引き継ぎ、従前の水準の収入を確保していく見込みは乏しかったと見るのが妥当であり、かつ、将来に向かっての収入減少の事態は(亡)○○が死亡した時点で予測可能であったとみるのが相当であるため、不支給とした原処分は妥当でなく取消。(H14.1.31)

<ここがポイント>

 本件は、生計維持要件となっている将来にわたって年収850万円以上の収入があるかどうかが争点となった。請求人の年収であるが、前年は1043万円、翌年は1010万円、さらに次年度は800万円、その次は780万円であった。これをみると、死亡した前年とその翌年は850万円以上となっているが、その後は下回っている。亡くなった夫は、死亡前より会社の売却先を探しており、業績は下り坂であったことを考慮すると、従前の水準の収入を確保していく見込みは乏しいとして、将来にわたって850万円以上の収入はないと判断された。

 

 請求人収入は、配偶者の死亡時点において定められた基準収入額(600万円)を超えていたが、死亡日の約9か月後には基準収入額は850万円に改定されており、死亡の前年には明らかに850万円を下回っていること等により原処分は妥当でなく取消。(H14.3.29)

<ここがポイント>

 基準収入額を超えていたかどうかが争点となった。死亡したのは、平成6年。各年の収入を見ると、平成5年に733万円、平成6年に752万円、平成7年に777万円、平成8年に817万円、平成9年に847万円、平成10年に867万円であった。死亡した当時は、基準収入が600万円であったので、すべての年で超えていることになるが、9ヵ月後に850万円に改定されており、そうなると850万円を超えるのに5年ほどかかっていることになる。さらに、審査会では、あくまでも死亡の時点の旧基準金額のみを用いて年金支給の可否を決定することは必ずしも適切ではない、として改定後の850万円を基準に判断された。

 

 請求人の所得は、配偶者の死亡の前年において定められた基準額(655.5万円)を超えていたが、その前後の2年の所得はいずれも基準額を100万円以上下回っていること等から、法所定の金額以上の収入を将来にわたって有する者と認定してなされた原処分は妥当でなく取消。(H14.11.29)

<ここがポイント>

 保険者は基準年収である850万円以上の年収が見込まれるとしたが、請求人は自営業者であり、所得年額655.5万円を基準としても差し支えない通達があることより、所得基準ではどうなのかをみた。平成8年に644万円、平成9年に822万円、平成10年に641万円、平成11年に552万円、平成12年に673万円、平成13年に538万円であった。その結果、平成9年と平成12年の2回のみが超えているに過ぎないとして、基準額を下回っていると判断された。

 

 請求人は、夫が設立した会社の名目的取締役であり、その経営、業務に実質的に関与したことはなく、夫の死亡後に会社の事業を引き継ぎ従前の水準の収入を確保していく見込みは乏しかったとみるのが妥当で、かつ、この事態は、死亡した時点で客観的に予測可能であったとみるのが相当であり、生計を維持した者と認められないという理由で、遺族厚生年金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.12.24)

<ここがポイント>

 死亡の当時は、基準額を超えているが、近い将来に基準額を下回るかどうかが争点となった。死亡した前年である平成11年の年収は1200万円で超えているが、平成12年は755万円で既に下回っている。請求人は夫が死亡した翌月に代表取締役を辞任しており、辞任の理由としては従来どおりの報酬を受けることについて、社内外の理解が得られないとしている。さらにその会社は破産状態であったことからも将来にわたって基準額を超える収入を確保することは困難であると判断された。

 

 請求人の係る生計維持要件の設定に当たっては、遺族の将来にわたる収入を予測し、その予想収入額と基準金額とを対比して判断することとされているが、死亡と同年内に基準金額が改定されたのであること等から、生計を維持した者とは認められないという理由で、遺族厚生年金を支給しないとした原処分は妥当でなく取消。(H14.12.24)

<ここがポイント>

 平成6年3月に死亡し、同年11月に基準額が850万円に改定された。年収850万円以上となると3年超えることとなるが、所得の655.5万円でみると超えているのは2年となり、2年であれば将来にわたって確保しているとはされないと判断された。

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