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降格  
   
      

コンピテンシー面接マニュアル

■降格(アーク証券事件、東京地裁、H12.1.31)

・事実の概要

 証券会社Yは、就業規則に基づいて給与システムが定められ、職能資格制度が取られていた。
 X1およびX2は、同業の他社で15年ないし25年の営業経験を積んで途中入社した者であり、平成4年4月には課長職に昇格していたが、その後就業規則が変更される平成6年11月までの間に何回か降級と降格をされた。なお、Yの就業規則には、営業成績や勤務評価に基づく降格を予定した規定はなく、また、平成4年5月以前には成績不良を理由にしたと見られる降格の事例も存在しなかった。
Yは、平成6間11月に営業収益が悪化したために総人件費を削減する必要が生じたとして、就業規則に「昇減給は、社員の人物、能力、成績等を勘案して行う」との規定を導入した。そして、X1およびX2は、この就業規則変更後さらに何回か降格や降級された。その結果、平成4年当時と平成11年を比べると、月額で3分の1ほどに減少していた。なお、この間のX1およびX2の成績は、課長職の中でも平均以下ではあったが、降格されるほど劣悪ではなかった。
 X1およびX2は、本件訴訟の前に2回の賃金仮払仮処分申立てをしており、第1次仮処分決定および第2次仮処分決定はいずれも申立ての一部を認容している。

・判旨

請求一部却下一部認容一部棄却

1 平成6年11月変更前の旧就業規則の給与システムは、他の企業でも採用されている一般的な職能資格制度であり、「いったん備わっていると判断された職務遂行能力が、営業実績や勤務評価が低い場合にこれを備えないものとして降格されることは、何ら予定されていなかった」。降格に関して労使慣行は成立していないし、採用時のXY間の合意も存在していない。したがって、この間の降格や降級は、法的根拠がなく行われたものである。

2 平成6年11月の就業規則変更で降格・降級に関する規定が導入されたことにより、長期的なサイクルの中で営業実績を上げれば昇格することができるというそれまでの安定した地位を失い、かつ多数の労働者が降格や賃金減少の不利益を受けており、それはかなりの程度に及んでいる。Yの営業収益の減少から、労働者全体の給与を削減する必要性を否定できないが、代償措置その他関連する労働条件の改善措置は執られておらず、労使間の利害調整も不十分であることから、変更の合理性を肯定することはできない。以上のことから、本件就業規則変更の効力は否定され、この間の降格や降級も法的根拠がなく行われたものといえる。

※ひとりごと

 日本の企業で一般的に導入されている職能資格制度とは、人間の持つ本質的保有能力に光を当てており、能力は低下しないという基本思想をもっているものであり、「仕事をこなすランキング」を付けることにより給与設定をしている。
 本件の場合、就業規則の規定の有無や労使慣行の有無が問題ではなく、降格するに当たる合理的な理由が存在するかどうかだ。確かに成績は平均以下であったようであるが、何も給与を3分の1までに減額するというのは権利の濫用と言える。
 このような問題は、どこの企業でもよくある話であるが、実際に降格や減給をする場合には相当な時間がかかる。まずは、本人にこのような成績では不満であることをきちんと伝える必要がある。そして、本人もそのことに納得、あるいは同意していることの証拠がほしい(さもなければ、降格や減給の同意書そのものズバリが必要となってしまう。)。人事考課表を多くの企業ではつけていると思うが、通知表方式(数字の5段階評価)では意味がなく、本人に記述させ、そのことに対して上司が記述し、さらに面接により双方の意思のすり合わせをしておくと、問題が起こった場合であっても同意書と同等の考課があるのと考えている。したがって、人事考課は、絶対に記述式で、かつ、まずは本人に申告させることである。
最近の賃金制度改革といえば、まず職能資格制度からの変更であり、減給する仕組みを取り入れてほしいというものになっているのも、本件のように職能資格制度では減給ができないからかもしれない。(by Hideyuki Iwase)

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